ABEMAオリジナルドラマとして放送中の『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』(以下『闇を生きる~』)。昨年1月より放送されたドラマ『インフォーマ』(カンテレ)の続編で、小社刊行の沖田臥竜氏の小説『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(サイゾー文芸部)を原作としたクライム・サスペンスだ。
本作中では、「インフォーマ」と呼ばれる情報屋・木原慶次郎の存在を軸に、社会の闇や人間の本質をあぶりだしていくさまが、ときに残虐に、ときに痛快に独特の映像美で描かれていく。 そして、今作『闇を生きる~』は、初回放送から、同局ドラマとしては過去最高の視聴記録をつくり、視聴者からは「日本のドラマにはない世界観とアクション」「キャストが見事」「究極のエンタメ作品」といった絶賛の声が寄せられる中、今は物語中盤に向けて、ヒートアップしている。
そこで、この話題作を生み出した原作・監修の沖田臥竜氏と、前作では監督を務め、『闇を生きる~』ではプロデューサーを務めた藤井道人氏を直撃。本作誕生の舞台裏に迫った——。
インフォーマ」はどのように生まれた?
——まずは『インフォーマ』シリーズ誕生のきっかけを教えてください。
沖田臥竜(以下、沖田) そうですね、これは日頃からの藤井(道人)監督とのやりとりの中で、「情報屋を題材にした話をやりませんか?」と持ちかけられたところがそもそものスタートでした。
藤井道人(以下、藤井) 沖田さん自身が、ジャンルを問わず、表に出ないような話を個人的にしてくれることもあって、情報を握る人間の強さやおもしろさを実感できました。それで、普段、映画やドラマを作っている人間には思い浮かばないような、沖田さんにしか書けないものをベースに、解像度の高いドラマが作れるという確信がありました。
——主人公である情報屋・木原慶次郎のモデルは、沖田さん自身なのでしょうか?
沖田 物語を書くにあたって、自分の経験は活かしていますし、登場人物に自分の似たところが反映されるとは思いますが、木原ほど暴力的かつストレートに生きることなんて、実社会ではできません。でも、木原みたいにできたら、今の自分の悩みとかも吹っ飛ばしていけるだろうなという願望みたいなものは当てはめました。それを桐谷さんがうまく演じて、育ててくれた。木原は、桐谷さんだからこそ作り上げられたキャラクターですね。
藤井 それは僕もすごく感じていて、沖田さんが愛情をかけて木原を書いていく上で、「自分が木原だったら、こう言うかもな」みたいな自己投影をしているんじゃないかと。だからこその人間味がベースとしてあって、それを健太さんが演じて、監督が演出することで、また違う木原が育っていくという感じですよね。
――今回、藤井さんは直接メガホンを取るではなく、プロデューサーという立場にあったので作品を客観的に見られるところもあったと思いますが、完成した『闇を生きる~』をどうご覧になりましたか?
藤井 1作目は、木原慶次郎という男がどういう人間なのか、それぞれの登場人物との関係性、「インフォーマ」とは何をするものなのかなどを、ある種セットアップをするような必要性がありました。そこがきっちりできたからこそ、今作は、エンタテインメントに振り切れていますよね。ABEMAがしっかりと予算を組んでくれたことで、その規模感が拡張できたのかなと思っていて、プロデューサーとして誇らしい気持ちもあります。
沖田 藤井さんって、本来はすごく辛口なんですよ(笑)。自分は監修者としてできる限り現場に行っていきましたが、撮っているときは、客観的に見にくい部分もあって、「果たしてほんまに面白いんやろか?」という部分もありました。ただ、出来上がったものを藤井さんに「すごい」と言ってもらえたことで、間違ってなかったんだなという安堵感はありました。
カンテレからABEMAへ…何があった?
——前作『インフォーマ』の放送から2年も立たないうちに、続編が放送されることになりました。異例のスピードですが、この間にどのような流れがあったのでしょうか?
沖田 作品にかかわった誰もが、このチームで続編をやりたいと、前作の撮影中から口にしてました。そんな思いも相まって、主演の桐谷さんや佐野玲於さんをはじめとした俳優部の皆さん、プロデューサー陣、スタッフの人たち……いろんなかたちで携わってくれた人たちのそれぞれの熱量が視聴者にもちゃんと伝わったのかなって。その視聴者からの反響や評判がこちらにも跳ね返ってくるのがよくわかって。だからこそ藤井さんが、すんなりと「次をやりましょう」って言葉に出せるような状況が生まれたんだと思います。それだけ、作品が力強かったんでしょうね。そこから、続編に向けての自分たちの動きは早かったですよ。
藤井 前作は、地上波放送はカンテレだけで、東京では流れなかったんですよ。「俺が作ったんだぞ」「ふざけやがって」と思いましたね。あ、ジョークです。(笑)。でも書いていいですよ。ただ、その分、Netflixを通して見てくれる人たちがすごく増えて、Netflix内のランキングも放送回ごとに上がっていって、2位まで行って。すごく嬉しかったけど、悔しかったんですよ。だから沖田さんに「やっぱり悔しいし、続編をやりましょう!」って伝えました。それで、まずはバンコクに行ってポンコツが銃撃戦に巻き込まれるところから始めましょうみたいな、ちょっと大きいことを考えました。そのとき、カンテレさんのドラマ枠では、予算の問題もありますし、その規模感では難しいかなというところがあって。それで、次はABEMAさんでやろうと思いますと、カンテレさんにお伝えしたところ、快く送り出してくださったという流れです。
——藤井さんが所属する制作会社BABEL LABELが、ABEMAと同じサイバーエージェントグループということも関係がありましたか?
藤井 はい。話をしやすい環境ではあったので、ABEMAさんに、「こういうものを次のやりたい」と言ったら、本当に即決で「やりましょう!」と。「大丈夫ですか? お金かかりますよ?」って言ったら、「かけましょう!」と言ってくれて。宣伝予算もしっかりかけて、渋谷を広告ジャックしてくれましたね(笑)。ABEMAさんもすごいですが、沖田さんが言った通り、これって、作り手のパッションや熱量がひとつにならないと実現しなかったと思います。
――それでは、今後ますますヒートアップするであろう『闇を生きる~』の見どころをお願いします。
沖田 自分としては、海外ロケのメリットを活かしたアクションへのこだわりを感じてほしいですね。たとえば、これまでいろんなドラマや映画を見て、拳銃の撃ち方に違和感があったんですよ。こんな構えで当たるかとか。細かいところでは、トリガーにかける指の位置もちょっと違うんですよね(笑)。なんでタイでの撮影がよかったかっていうと、俳優部の人に射撃体験に実際に行ってほしかったんですよ。まず体で覚えてほしいと。体で覚えたら、拳銃を撃ったときには絶対に手首は縦に振られて、こういう反動が来ますみたいなことがわかると思うんです。そこまで見ている人は少ないかもしれませんが(笑)、そういったディテールにこだわれたことは、自分の中では達成感があります。『インフォーマ』をきっかけに、ドラマや映画での射撃の描写は俺が変えていくよって。
藤井 僕としては、とにかく振り切ったエンタメ感を味わってほしいですね。規模が拡大した分、派手さも増しました。今回は、逢坂元監督にまかせて本当に正解だった。彼は、喫茶店での恋人同士の会話をしっとり描くとかに興味がなく(笑)、人はどれだけ愚かかとか、愚かなヤツにどういう天誅を食らわすかとかを描きたい人で、そのためにドンパチするなど派手なものが大好き。バンコクの刑務所で大量の囚人を暴れさせるわ、人をビルから突き落とすわ、トゥクトゥクを水没させるわ。あちこちが爆発して、ヘリが飛んできて……そんなことは普通やらせないよっていうことがてんこ盛りで。そういう派手さがあるからこそ笑えるようなシーンをいっぱい入れてあります。そしてちゃんと、前作へのオマージュもあるしっていう、その振り切ったエンタメ感、何にも難しいこと考えなくていいっていうのが今回の『闇を生きる~』の最大の魅力でしょうか。
沖田 どんだけお金がかかるねんって中で、ABEMAさんにはいろいろ無理を聞いてもらって、ドラマを盛り上げるためのいろんな仕掛けも考えてもらいました。これだけやってもらって、反響を出せなかったら自分たちの責任なので、撮影が終わったから、この仕事も終わりというのではなく、自分でやれることは宣伝も含めてやって、最後まで戦っていくつもりです。反響を出して、ぜひ次もと、みんなに言ってもらえるようにしたいですね。
――気が早いですが、シーズン3も期待したくなります。
沖田 自分はやる気がみなぎっていて、藤井さんには「次回作には、こんな要素を入れたい」を話しているのですが、早くもダメ出しを受けました(笑)。ある重要人物を●●するという設定だったんですが。
藤井 沖田さんの話は、こちらの常識を軽く超えてくるので(苦笑)。ただ、次をやりたいという気持ちは、僕も含めて多くの人が持っています。『闇を生きる~』の反響を受けて、早く決められたらいいですね。
沖田 前作、今作と回を重ねるごとに熱量も高まり、作品もより力強いものになりました。そんな環境で、楽しく仕事できる。それってどんな職業であったとしても、1番大切なことだと思うんですよね。この座組は本当に楽しくできてるので、やっぱりまたやりたいです。
(構成=太田サトル/写真=Shunichi Oda)
『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』
毎週木曜日23時より「ABEMA」にて放送中(過去回も視聴可能)
週刊タイムズの記者・三島(佐野玲於)は、世間を騒がせている〈闇バイト殺人事件〉の黒幕を調べるために、編集長の命でタイ・バンコクへ飛ぶことに。そこで三島を待ち受けていた人物は……2年前の〈火だるま殺人事件〉で三島に地獄を味わわせた、“インフォーマ”の木原(桐谷健太)だった。木原に翻弄されながらも取材を進める三島。そして2人の前に、インフォーマを名乗る謎の男・鬼塚(池内博之)が立ちはだかる。木原と三島は、〈闇バイト殺人事件〉で盗み出された”謎のブツ”をめぐり、鬼塚・そして現地マフィアと壮大な情報戦に巻き込まれていく——。
同じく〈闇バイト殺人事件〉の黒幕を追う警察では、異例の捜査体制が組まれ、警視正・高野(二宮和也)の陣頭指揮のもと捜査が進められることに。この事件の裏に潜む“巨悪”とは、いったい何なのか。
生きるか、知るか。
情報は身を守る盾にもなれば、人を殺める武器にもなる。地獄の扉を再び開けてしまった、木原と三島の命運は——?
原作小説『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』
沖田臥竜・作/サイゾー文芸・刊/1400円+税
amazonなどネット書店、全国書店で発売中