『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』の礎になった25年の歳月

沖田臥竜のINFORMA奇譚 EPISODE9

ABEMAオリジナルドラマ『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』は早くも中盤戦に突入。11月28日は第4話が放送されるが、謎が謎を呼ぶスピーディーな展開で、考える暇なく、熱量の高い物語に飲み込まれている人たちが増えてるようだ。そんな比類なき作品の原作、監修を務めた作家・沖田臥竜氏によるリアルタイム・コラム。今回は『インフォーマ』を生み出すまでに費やされた時間、さらにその時間の先にある未来を綴る――。

見ているのは「続編」のその先

『インフォーマ』の現場を私は「学校」と表現してきたが、さしずめまったく知らない人たちの現場に監修として呼ばれていく時は、「転校生」のような心細さを味わうことができるものである。

 6月頃であった。『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』の日本パートの撮影中に、ハリウッドドラマ『TOKYO VICE Season1』と『~Season2』で一緒だった助監督から、ある作品への監修のオファーがあった。その助監督とは気心が知れていたのだが、「ボクはその作品に入ってないのですが、知り合いが、沖田さんに仕事の依頼をしたいので紹介してほしいと言ってきているのです。話だけでも聞いてもらえませんか」と言われ、結果、仕事を請けることになった。ただ唯一の危惧は、スタッフも俳優部も知らない人たちばかりということだった。

 だが、私に自信がなかったかと言えば、そうではない。私の映像の仕事のスタートは、『ヤクザと家族  The Family』だった。私はそこで本当に多くのことを学んだ。もしも違う作品ならば、映像づくりに対する解釈はもっと違うものになっていたはずだ。

 ものづくりに対する現在の姿勢は、そこでの経験がベースにある。スタッフの大変さ、俳優部のひたむきさ……さまざまなことをそこで学んだ。それでも、何年かぶりに行う、全く知らない人たちとの仕事に心細さがあったのは確かだった。そこで私は『インフォーマ』で知り合った、ある人にお願いしたのである。

 その人は、人間的にも実に素晴らしく、知らない人ばかりの現場でも、私が仕事をしやすいようにと手配してくれたのだ。どんな業種の仕事であっても、大切なのは人間関係だと思う。私の場合はどんなことがあっても書き続けてきたお陰で、多くの人と出会うことができ、人間関係が広がっていったのだ。

 デビューまで十数年かかった。未来に何の保証もない努力を続けていると、「こんなことを続けていてもどうせ無駄だ」という思いが嫌でも湧いてくる。だけど、私は筆を折らなかった。小説家になろう、そしてそれを映画化にしよう。その思いだけで約25年間書き続けてきたのだ。

 もうすぐ、その夢が叶うところまでやってきた。

 私には、目立ちたいとか有名になりたいとかいう思いが一切ない。それはあくまで、自分が書いた作品を世に広めるための手段でしかないのだ。はっきりいって、今のまま食べていければ十分なのだが、生きていく上で、これくらいの財だけは残そうという目標があって、それまでは誰よりも働き続けるつもりだ。

 物欲もなければ、質素な生活も気にならない。ただ地味にものづくりを続けたおかげでたどり着いた一瞬の輝ける場所。私はそれを愛しているのだと思う。

今回の一コマ「優吉役の兵頭功海さん、二階堂役のSUMIREさん。バンコクにて」

 物語は唯一無二でなくてはならない。誰かの物真似ではつまらない。その唯一無二が今、『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』として爆発していることを、私はひしひしと感じることができている。 

 「続編をやりましょう!」という声がいつかかっても大丈夫なように、今、次の作品を必死に書いている。十数年前、とにかく本を出したくて出版社を回ったのが、それらが嘘みたいに感じることができるところくらいまでには来ることができた。売れてるとか売れていないではなく、何の保証もなかった未来に、仕事ができる場所を作れたのだ。作品作りに楽なんてことは微塵もない。苦悩の中で生み出し続けてくるのだ。すまないが、私が見ているのは続編ではない。まだまだ、その先を見ている。

 だからこそ、『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』で転けることができない。私にとっては当然のことだ。

 待たせた。第4話からは、視聴者が待ってくれていた話だ。言っただろう。回を重ねるごとに『インフォーマ』はドライブがかかってくると。根拠もなく、そんなことをインフォーマ・チームは言いはしない。

 今夜の第4話で、さらに物語は大きく動きを見せることになるだろう。準備はいいだろうか。

 昔、テレビが主流だった時代。多くの人が、ドラマを毎週心待ちにしていたことを覚えているだろうか。『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』で、そのわくわくを取り戻させたいと思っている。

 「昨日、『インフォーマ』見た?  おもしろかったね!」

 難しい言葉はいらない。学校や職場で話題にしてもらえるために、私たちは物語を作り続けている。

   第4話の幕を明けてもいいだろうか……。

(文=沖田臥竜/作家・小説家・クリエイター)

ドラマ『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』
毎週木曜日23時~ABEMAにて放送

週刊タイムズの記者・三島(佐野玲於)は、世間を騒がせている〈闇バイト殺人事件〉の黒幕を調べるために、編集長の命でタイ・バンコクへ飛ぶことに。そこで三島を待ち受けていた人物は……2年前の〈火だるま殺人事件〉で三島に地獄を味わわせた、“インフォーマ”の木原(桐谷健太)だった。木原に翻弄されながらも取材を進める三島。そして2人の前に、インフォーマを名乗る謎の男・鬼塚(池内博之)が立ちはだかる。木原と三島は、〈闇バイト殺人事件〉で盗み出された”謎のブツ”をめぐり、鬼塚・そして現地マフィアと壮大な情報戦に巻き込まれていく——。

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原作小説『インフォーマ2  ヒット・アンド・アウェイ』 
沖田臥竜・作/サイゾー文芸・刊/1400円+税
amazonなどネット書店、全国書店で発売中

この記事を書いた人

沖田 臥竜

作家・小説家・クリエイター・ドラマ『インフォーマ』シリーズの原作・監修者。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)がドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。