沖田臥竜のINFORMA奇譚 EPISODE6
自らワクワクドキドキする道を開拓
年を重ねるごとに一年があっという間すぎるとは、誰しもが聞かされてきた言葉だろうが、あれは本当だった。ついこの先日まで暑かったと思えば、気がつくと秋も深まり、もう今年も残すところわずかではないか。こうやって人生は終焉を迎え、人は朽ち果てていくのだろうか……たわけ!たわけ!である。今から幕が上がるのだ。黄昏れている場合ではないだろう。
この原稿が配信される頃、私も登壇し、挨拶をした放送前日のプレミアムイベントを終えて、いよいよ 『インフォーマ-闇を生きる獣たち-』がABEMAで放送される日を迎えている。
大人になってから、ワクワクドキドキできる瞬間を何回迎えることができるだろうか。明日が楽しみでなかなか寝つけないなんていう夜を何度過ごすことができるだろうか。活字の世界というのはすごく地味で、お金になんて大してならない。それは作家のような書き手ならば、誰もが痛感していることだろう。
その現実をまざまざと見せつけられ、筆を折った書き手もたくさんいる。だが私は違った。今もこうして書き続けている。小説家になると決意してから、一度もその想いは揺らいだことがない。私は筆一本でここまでやってきて、書くだけではなく、その過程の中で自らで進む道を開拓してきた。ドラマやマンガにもなった『インフォーマ』のマルチ展開もしかりである。だからこそ、こうして今でもわくわくドキドキできる瞬間を味わうことができているのだと思う。
書くことなんて、物語を生み出すことなんて、1行目から誰だって辛い。そこにプロかアマチュアとかなんて関係がない。作家だから小説家だから書けるのではなく、肩書に特殊能力なんて備わっていない。それでも物語を書き続けていくのである。
正解やゴールなんて初めから存在しないのだ。終われば、また書き始める。単調な繰り返しの中で、筆を磨き続けていかなければ、自分の代わりなんていくらでもいる世界では生き残れない。
それはそうだろう。誰だって文字を書くことができるのだ。女子高生のワードセンスなんてえぐいぞ。若い子たちがつくる歌詞なんか読んでいても、私には到底発想できない表現に感心させることも多い。だけど私は負けない。長丁場の戦い、10万文字の戦いになれば、誰にも負けないと思っている。それは経験値の違いから来ているところが大いにあるだろう。
インフォーマという作品に広がる世界観の根底
何年もの歳月をかけ、物語を生み出しても大してカネにならないかもしれない。翻せば、カネの力では大勢の人々の心を揺さぶることができない。そこに物作りの醍醐味があるのではないだろうか。
私は物語を生み出すとき、常に既存のイメージや固定観念をブチ破ることからスタートさせる。誰しもがこれまで「情報屋」と聞けば、闇に潜んで身を隠す者を連想したたはずだ。その固定観念をブチ破るのは、容易いことだった。なぜだかわかるだろうか。私自身が、ものを書くという世界で生き残るための活路として自ら見出したのが「情報を司る」ことだったからだ。
情報の収集力やそのスピード、分析力において、私はどれだけ謙遜しても、他人に負ける気がしない。そして情報を扱うが上で、いつの頃からか弱者側で戦ってみたくなっていった。それは何も難しい感情ではなく、困っている人が目の前にいれば、助けてやりたいという当たり前のものだ。そうやって生きていれば、どうなるか。それも実に単純なことで、人から信用されるようになってくるのだ。人に信用されれば、人脈が生まれてくる。そうやって、沖田にだったら、と情報が集まって来るようなネットワークを自分で構築してきたのだ。
私の人間関係や人脈の実像は私しか知らない。それが私の最大の武器だろう。肝心なことは何があっても話すことはない。その世界観が『インフォーマ』という作品の根っこの部分となっている。だからこそ刺激的なのではないか。
その上で私には、物を書くスピードと登場人物の名前を考える力については、自分を俯瞰して見ても、すまん、ずば抜けている。私は物語を生み出すとき、私の中で登場人物の名前がハマらなければ、書かない。字埋れしない字面と口にしたときのイントネーション。まずはそこから始めるのだ。その段階まで作りこんで初めて、その名前に魂が宿り、躍動し、親しまれていくのである。それを理解できている書き手はいるのか。すまないがいたとしても、数えるほどしかいないだろう。
名前一つひとつに物語を宿す意味
俳優部の人たちがお芝居に入ってもらうときのために、そこまでは作り込むことが私の最低限の仕事だと思っている。演じてくれる役者さんが、現場でも視聴者からも、役柄で呼ばれるような、入りこんだお芝居のできる環境を作ってくることも私の役目だと思っている。
前作で私が1番、ハメ込むことができた登場人物が横浜流星さんが演じた「河村愛之介」であった。登場人物の一人ひとりには、私しか知らないエピソードが多数あって、名前をつけるにあたっては、そうした表には出ない情報も踏まえるのだ。そこで、私は絶対に妥協しない。
今作『インフォーマ-闇に生きる獣たち脱-』においても、登場人物の名前の数だけエピソードがあるのだが、河村愛之介同様に、高野龍之介と優吉には特別な想いを込めている。その想いは、必ず観ている視聴者を惹きつけ、魅了してくれるのだ。
もちろん、木原慶次郎も三島寛治も同様だ。タイトルも登場人物も躍動させたければ、そこに拘り続けなくてはならないのだ。そこを疎かにしてしまうと、読者も視聴者も感情移入なんて到底できない。
誰しもが口にしてくれる『インフォーマ』というタイトルを生み出しのは私である。そこから大勢の人たちを巻き込み浸透させ、今、再び幕が上がるのだ。ワクワクしないわけがないだろう。
準備はいいだろうか。2024年の最後を飾る作品として申し分はないはずだ。もう一度言う。心の準備はいいか。
ポンコツのひたむきな情熱、木原慶次郎の粗暴を演じながらも、実は繊細で義理堅さを宿した内面。
今度の敵も一筋縄ではない。敵役として登場するキャラクターも、前作を彩ってくれた登場人物たちも個性豊かに役柄を超えて躍動してくれている。
舞台は微笑みの国・タイ、バンコクからだ。「週刊タイムズ」編集部には、長澤編集長に箱崎デスク、有村編集者がいる。三島の止まり木はいつも「週刊タイムズ」で、そこには三島が疲れた身体を癒すことのできる居場所があり、視聴者の方々にも、三島が「週刊タイムズ」編集部に戻ると、ホッと安心してもらえるのではないだろうか。
そして、木原慶次郎。断言する。間違いなく『インフォーマ』の座長、桐谷健太さんのお芝居はSクラスである。
『インフォーマ-闇を生きる獣たち-』、開演。
(文=沖田臥竜/作家・小説家・クリエイター)
ドラマ『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』
11月7日23時~、ABEMAにて放送開始
週刊タイムズの記者・三島(佐野玲於)は、世間を騒がせている〈闇バイト殺人事件〉の黒幕を調べるために、編集長の命でタイ・バンコクへ飛ぶことに。そこで三島を待ち受けていた人物は……2年前の〈火だるま殺人事件〉で三島に地獄を味わわせた、“インフォーマ”の木原(桐谷健太)だった。木原に翻弄されながらも取材を進める三島。そして2人の前に、インフォーマを名乗る謎の男・鬼塚(池内博之)が立ちはだかる。木原と三島は、〈闇バイト殺人事件〉で盗み出された”謎のブツ”をめぐり、鬼塚・そして現地マフィアと壮大な情報戦に巻き込まれていく——。
原作小説『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』
沖田臥竜・作/サイゾー文芸・刊/1400円+税
amazonなどネット書店、全国書店で発売中