沖田臥竜のINFORMA奇譚 EPISODE4
既報の通り、サイゾー文芸部から発行されている小説『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』がドラマ化され、『インフォーマ-闇を生きる獣たち-』として、11月7日からABEMAにて放送が開始される。すでに、豪華かつ個性的な実力派俳優たちが出演することが発表され、大きな話題を呼んでいるが、さらにサプライズは待っていた。主題歌をB’zが担当することが発表されたのだ。4年前まではタイトルしか存在しなかった『インフォーマ』は、短期間でドラマ、小説、コミックとマルチに展開され、最新作では国民的アーティストまでもが参画するに至った。そんな夢物語の一遍を作者である沖田臥竜氏が綴っていく——。
放送開始時期を最終ジャッジに影響を及ぼした「ある出来事」
まだ『インフォーマ』が小説でもドラマでもなく、プロットすら生まれる前の何物でもなかった頃、新幹線の中で『インフォーマ』というタイトルを何度も口にしていた。前作の『ムショぼけ』というタイトルを超えるインパクトがあるのか。何度もつぶやいていた。今から4年前の1月のことだ。
このときに『インフォーマ』を取り巻く今の状況を想像できていたかと言うと、私は占い師ではない。想像通りだったなんて、ウソでも言わない。物語は生き物だ。それを容易く想像できることを私は好まない。
私はずっと地上波へのこだわりがあって、『インフォーマ』では関西テレビに企画書を持っていき、そこからNetflixで世界配信のクロスを仕込むことが計画されていた。だが、そのことについて私は興味がそこまでなかった。それよりも、できるだけ早く放送したかったのだ。そして、放送開始の候補日が10月か年明けの1月かの判断を迫られた。最終的にカンテレで数々のヒット作を生み出してきたプロデューサーの豊福さんと話し合い、10月放送スタートということで私の中では固まりつつあった。
1月ならば、Netflixで世界配信を狙えることを説かれても、私の意思は揺るがなかった。物語は生き物である。何があるかわからないのだ。何らかの事情により、流れたりバラしになったりしたことだってある。放送が遅れれば、そのリスクはわずかでも高まる。満を持して万全な状態で解禁することがよいときもあれば、早く攻めたほうがよいときだってある。
だが、結果的に、『インフォーマ』は2023年1月にスタートすることになる。そうするようお願いしたのも私だが、そこにはサッカーのワールドカップが関係していた。10月ならば、サッカーのワールドカップとドンかぶりすること。時差を考えた場合、『インフォーマ』の放送とかぶることも出てきてしまい、必然的に何話かは『インフォーマ』の放送が休みになる恐れがあることが、私の中で引っかかったのだ。
みんなの意見を聞いても、1月のほうが良いのではないかという意見が強かった。作品作りは決して自己満足で終わってしまってはならないのは言うまでもなく、ビジネスである以上、結果は残さなければならない。最終的には熟考した末、1月の放送、Netflixでの世界配信となったのだが、やはり人の意見はしっかり耳を傾けることが大事ということを改めて実感させられたのだった。
そして、その決断が現在に繋がったのだ。もしも10月に放送していれば、少なくとも違ったものになっていただろう。そして続編が決定したときには、始めから今度はABEMAでの配信をお願いさせてもらっていた。それは、映像業界でABEMAの持つ力が凄いスピードで駆け上がってきていたことを感じていたからだ。勝負するならば、ABEMAだと確信していた。その読みは見事に的中することになる。
ABEMAの『インフォーマ』を絶対に成功させるという熱量は半端なかった。ABEMAプロデューサーの古賀さん、橋尾さん、中村さんの環境づくりは、現場でも裏方としても最高であった。
もう1人プロデューサーがいた気もするが、多分それは気のせいだろう。ジョニー、本当にすまない。こんなピュアで正直ものの私を許してやってほしい。悪気はないのだ。ただ、ジョニーは気づいていないようだが、彼にいつも仕事をふっているのは結果的に私なのだ。額縁に私の写真を入れて、会社に飾っていたとしても罰は当たらないのだぞ……なんてな。
B’zドンピシャ世代の私は、桐谷健太さん経由の交渉によりB’zが主題歌を歌ってくれると決まった時、興奮しないわけがなかった。同時にあのB’zが『インフォーマ』を知ってくれていたのだと思うと、新幹線で私は『インフォーマ』というタイトルを考えたときのことが脳裏で鮮明に甦った。あの時はまだ何物でもなかった。当たり前である。勝手に名付けただけなので、まだ知られる由もない。だが今、『インフォーマ』はたくさんの人を巻き込んで大きく羽ばたいている。そこから私は、何かあるとB’zの曲を聴くようになっていた。
私の映像の仕事は『ヤクザと家族 The Family』の現場が初めてで、そこで多くのことを学んできた。それがあっての今である。
それだけに今回の『インフォーマ』が初めての現場となったヨネこと助監督の米一碧海さん、演出見習いの小牧海愛さん、演技事務の門琴音さんの若い3人の人たちには、初めての現場で私が多くのことを学んだように、3人にも『インフォーマ』という作品に参加して良かったと思えてもらえていればうれしい。
そして今シリーズから参加してくれたヘアメイクの金山貴成さん。当サイトで連載していた『ムショぼけ』や『インフォーマ』にまつわる私のコラムも読んでくれていた。そんな素晴らしい人徳者がいるだろうか。多分だが、かなり高尚な家柄の方なのだろう。「もう沖田さん~やめて下さいよ~」という金山さんの笑顔が目に浮かんでくる。
ちなみにだが、ジョニーなんて長い付き合いだが、「あとで読んでおきますよ~」と言って、私のコラムなんて読んだことないという事実を指摘するのは、蛇足だろうか。
そんなスタッフの一人ひとり、俳優部の一人ひとりがいたからこそ、『インフォーマ』の続編は完成することができた。これは綺麗事ではない。事実である。
みんなで同じ方向を見て、長い夏を燃えてきたのだ。何年経っても私はみんなのことを忘れることはないだろう。
そして今度は視聴者。ABEMAでいう視聴者数の反応である。何も私は心配はしていない。だからといって、タカを括っているわけではない。後悔だけはしないように、ゴールインするまで私のできることをやり続けるつもりだ。
そして、B’zが歌う『インフォーマ-闇を生きる獣たち-』の主題歌の「鞭」は、インフォーマの為に書き下ろされおり、1度聴けば痺れることは間違いないと言わせてほしい。
(文=沖田臥竜/作家・小説家・クリエイター)
ドラマ『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』
11月7日、ABEMAにて放送開始
週刊タイムズの記者・三島(佐野玲於)は、世間を騒がせている〈闇バイト殺人事件〉の黒幕を調べるために、編集長の命でタイ・バンコクへ飛ぶことに。そこで三島を待ち受けていた人物は……2年前の〈火だるま殺人事件〉で三島に地獄を味わわせた、“インフォーマ”の木原(桐谷健太)だった。木原に翻弄されながらも取材を進める三島。そして2人の前に、インフォーマを名乗る謎の男・鬼塚(池内博之)が立ちはだかる。木原と三島は、〈闇バイト殺人事件〉で盗み出された”謎のブツ”をめぐり、鬼塚・そして現地マフィアと壮大な情報戦に巻き込まれていく——。
原作小説『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』
沖田臥竜・作/サイゾー文芸・刊/1400円+税
amazonなどネット書店、全国書店で発売中