沖田臥竜のINFORMA奇譚 EPISODE2
11月7日からABEMAで放送開始されることが発表された『インフォーマ-闇を生きる獣たち-』(原作『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』サイゾー文芸)。さらに10日には、森田剛、高橋和也 MEGUMI、一ノ瀬ワタル一、山中崇、北香 那、般若、大島涼花、二ノ宮隆太郎、などといった、前作『インフォーマ』を盛り上げた主要キャストが再集結することが発表された。さらに、この先にもサプライズ発表があるというが……放送開始に向けて、ボルテージが上がる一方の『インフォーマ-闇を生きる獣たち-』。唯一無二の作品が生まれるまでの舞台裏にあった物語を、同作の生みの親である作家の沖田臥竜氏が語りおろしていく。
バンコクで見せたキャストとスタッフの一体感
長いようで短い付き合いだったと思う日が来るかもしれない。すまないジョニー。高橋真理子の歌詞ではないが、ジョニーが読んだら伝えてほしい。「シーズン2から参加してくれた3人の熱きプロデューサーたちがいるのでもう大丈夫だと…。『インフォーマ』のマンガの担当の御田くんと仲良くやってほしい」と。そうなのである。『インフォーマ』は、小説、ドラマ、マンガとメディアミックスをかけているのだ。
声を大にしてぶち撒けてもよいだろうか。火付け役はこの沖田無双…もとい沖田臥竜である。その活躍ぶりは小説家の領域をはるかに凌駕してしまっているのに『情熱大陸』は一体どこに目をつけているのだろうか。仕方ないので、Google先生に「情熱大陸の出演のしかた」でも教えてもらうとするか……。
忘れない光景がある。それを見た瞬間に私は拳をグッと握りしめて、「これはいける!」と確信したのだった。
今年5月からのバンコクでの撮影中、一旦帰国し、再びABEMAのプロデューサーの橋尾さんとバンコクへと入国したとき、我々を空港で迎えてくれたのは、すっかり現地人と化したジョニーであった。私のエッセイではおなじみの、ドラマ『ムショぼけ』や『インフォーマ』を担当してくれたプロデューサーである。
今作を手掛けてくれたABEMAのプロデューサーの古賀さんと最初にタイ入りしたときも、迎えに来たのはジョニーであった。ほんの4、5日前に先にバンコクへと入っていただけなのに、あのときのジョニーの顔。すっかりタイを知り尽くした表情を顔面に貼り付け、「沖田さん~バンコクの撮影はですね~ちょっと日本と違うんだよな~。わかるかな、沖田さんに~」とロケバスで冷ややかな視線を浴びせてきたときには、こうも現地に染まりやすい性質に感心させられたものだ。
バンコクのいつものホテルに荷物を置くと、プロデューサーの橋尾さんと別れて、ジョニーと外へ出た。ホテルの裏にある寂れた居酒屋が私は気にいっていた。ジョニーにタイでの生活費を没収されて居酒屋へと向かうと、店の前のテーブルで7、8人が楽しそうに食事していたのだ。目を凝らすと、ABEMAのプロデューサーの中村さんや俳優部、シーズン1から参加してくれているスタッフたちだったのだ。
日本では、作品の打ち上げなどを除けば、俳優部とスタッフが分け隔てなく、たまたま食事している光景を目にすることなんてなかなかない。表方である俳優部には俳優部の、裏方を支えるスタッフにはスタッフのしきたりみたいなものがあり、その間には一定の境界線があるのだ。だが『インフォーマ-闇を生きる獣たち-』の現場では、事前にそれを軽々と超えていたのである。私はその瞬間に間違いなく、前作を超えることができると確信したのだった。
制作現場で化学反応が起こった理由
作品作りとは、AIでやれるものではない。人と人が集まって生み出されていく。だからこそ、現場の空気を私はしっかり見ている。監修の仕事もやっているので、原作を手掛けていないような作品の現場にも仕事で呼ばれることがあるが、すまぬ、空気の悪い現場は、スタッフがどこかで疲れている。
仕事だから疲れるのは当たり前だが、肉体的な疲れ以外にも「早く終わらないかな~」という空気が漂っているのである。もちろん、私だってそうだ。しょっちゅう「早く帰りて~」と思ったりしている。
だけどバンコクの居酒屋でみた光景は、撮影で疲れているにも関わらず、みんながみんな楽しそうだったのだ。
「先生!来られるのをみんなで待っていたんですよ!」
そういう中村プロデューサーの表情は笑顔だった。
「なんでオレが着く時間わかったん?」
尋ねれば、スタッフの村長が口を開いた。
「ぼくがジョニーさんに聞いていたんです」
村長は無口だが、私とは仲が良かった。生真面目で信頼のできる男であった。
「沖田さ~ん!店の中のテレビを観てくださいよ!Netflixでインフォーマをずっと流してくれてるんですよ!」
別のスタッフが店の中を嬉しそうに指さしたのだ。店内では店員のおばちゃんがニコニコしている。
「チッ、『インフォーマ』で商売繁盛しやがって~」
と、私は冗談を言いながらパイプ椅子に腰を下ろした。間違いなくそこは私の居場所だった。遠く離れた異国の地だというのに、私の心地よい居場所があったのだ。
私は作品作りにおいて、『インフォーマ』だけがすごいと言いたいわけでも、『インフォーマ』だけが売れたらよいと言いたいわけではない。私は小説もドラマも映画もマンガも、よい作品を読んだり観たりするのが大好きだ。だってそうではないか。そうした作品に影響を受けて今があるのだ。どんどん良い作品が世の中に誕生していってほしいと思っている。ただ、それを『インフォーマ』という作品で超えていくだけだ。
そして、もう一つ加筆しとかなければならない。そのときの会計で、中村プロデューサーが支払いしようとしたのを遮り、ジョニーが渋い顔を作って「大丈夫。ここはぼくがー」と言いながら、財布を開いて、みんなから御礼を言われていたが……よいか。私はジョニーのその神経に圧倒されてしまい、その場で言えなかったのだが、あのときの会計は、私から没収したタイでの生活費から支払われたのだ。お礼を言うならば、私にだったのだ。
このときだっただろうか。人間不信という言葉の意味をしっかりと理解したのは…。
確かにだ。楽しい現場もある。和気藹々とやっている現場もあるだろう。だが、ここまで表で輝く俳優部と裏でそれを支えるスタッフが団結し、連帯感を生み出して一つのドラマを生み出している作品が他にあるだろうか。ファミリーとか仲間とか、私はそういった言葉を使うことが好きではない。なぜか。それはどうしても薄っぺらく感じてしまうからだ。だが『インフォーマ』という作品で一緒に戦ってきた大勢の人たちを評するならば、ファミリーであり、仲間という言葉以外、見つからない。それはきっとみんな同じではないだろうか。
先に謝っておく。すまない。本当にすまないのだが、そうした化学反応を生み出している存在が私だということを、私は状況を俯瞰して見ることで理解してしまっている。ジョニーにしてもそうだ。ここまで絵になる人間がいるか。それは、私がどこかで彼が物語になるようにコントロールしてしまっている。そもそも作品作りとは、そういうものではないだろうか。
俳優部とスタッフが海外のスタッフまで巻き込んで、屋台骨を支えているのだ。それを今後、他の作品にも超えていってほしい。ただそのときには、我々はさらに先にいるだろうが……。
まだまだこれからである。『インフォーマ』でムーブメントを巻き起こすために、さまざま仕掛けられている。これでもか!これでもか!というくらい仕掛けている。『インフォーマ』で、これまでのドラマの歴史を塗り替える。その上で、私の本当の願望が叶えば、これ以上のことはない。すまないが、その願望を記してもよいだろうか。
もう読まなくてもよい。無理するな。読まなくてもいいので、小説をたくさん買ってもらえないだろうか。そうすれば、ジョニーだってもう少し私に気を使ってくれるようになり、私の懐もホクホクになるはずだ……。
なるほど、書いていてわかった。こんなことを書くから『情熱大陸』も振り向いてくれないのだな。納得である。
(文=沖田臥竜/作家)
ドラマ『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』
11月7日(木)23時より「ABEMA」にて放送スタート
週刊タイムズの記者・三島(佐野玲於)は、世間を騒がせている〈闇バイト殺人事件〉の黒幕を調べるために、編集長の命でタイ・バンコクへ飛ぶことに。そこで三島を待ち受けていた人物は……2年前の〈火だるま殺人事件〉で三島に地獄を味わわせた、“インフォーマ”の木原(桐谷健太)だった。木原に翻弄されながらも取材を進める三島。そして2人の前に、インフォーマを名乗る謎の男・鬼塚(池内博之)が立ちはだかる。木原と三島は、〈闇バイト殺人事件〉で盗み出された”謎のブツ”をめぐり、鬼塚・そして現地マフィアと壮大な情報戦に巻き込まれていく——。
原作小説『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』
沖田臥竜・作/サイゾー文芸・刊/1400円+税
amazonなどネット書店、全国書店で発売中