沖田臥竜のINFORMA奇譚 EPISODE13
ABEMAオリジナルドラマとして、視聴回数記録を更新しつづける中、ついに今夜、最終回を迎えることになった『インフォーマ −闇を生きる獣たち−』。本作で原作・監修を務めた沖田臥竜氏と藤井道人監督との二人三脚で始まったこの挑戦は、俳優やスタッフを巻き込み、多くの視聴者を魅了する物語へと成長した。そして、ネット上に拡大し、変容し続ける情報社会の中での「情報とのあり方」を提示してみせたのだ。「インフォーマ」というタイトルが生まれてから4年、いまだ挑戦のさなかにあるという『インフォーマ』。その誕生秘話と創作にかけた熱意を沖田氏自身が綴る。
インフォーマが生まれた日
この物語に「インフォーマ」と名付けたとき、まだ世の中の誰も『インフォーマ』の存在を知らなかった。当たり前である。私が名付けたのだ。藤井道人監督との会話の中だけで『インフォーマ』は存在していた。『インフォーマ』がまだ世間に認知されることなく、何者でもない頃の話で、そこから私たちの挑戦は始まった。
携わってくれたすべての人々が、個々に「インフォーマが話題になったのは自分のお陰だ!」と言ってもらえるような作品ができたと思う。それくらい、みんなが主体的に動いてくれた。俳優部もスタッフも誰ひとりが欠けても『インフォーマ −闇を生きる獣たち−』は、今の形で世の中に解き放つことができなかった。だからこそ、みんなに自慢してもらいたい。こんなにも視聴者の人たちを毎週、ワクワクドキドキさせることができる物語を作ったことを大声で自慢してもらいたい。みんなの流した汗で、『インフォーマ −闇を生きる獣たち−』はできあがったのだ。今夜、伝説になろうではないか。
まだ、家で映像を楽しむ手段がテレビしかなかった時代、私には毎週、楽しみにしていたテレビドラマがあった。今と違い娯楽が乏しい分、余計に1週間が待ち遠しかった。
翌日は学校でも「昨日観た?」から始まる会話に花が咲いた。そういう物語を作りたいと思っていた。最終回を迎えた際、視聴者が終わることを寂しがってくれるようなドラマを生み出したいと思っていた。
新幹線の中で、「インフォーマ」と何度も1人で言葉に出して、感触を確かめていた過去の自分に伝えてやりたい。ちゃんとその想いを伝えることができたぞと。『インフォーマ』というタイトルがこんなにも多くの人に口に出して呼ばれているのを知れば、あの頃の私はなんて言うだろうか。私がいちばん驚かせたいのは、そんな過去の自分自身なのかもしれない。
誰しもが抱いていた情報屋のイメージを崩すことから始め、カンテレからABEMAへというプラットフォームの垣根も、これまでにない熱意と感謝を示すことで乗り越えてきた。『インフォーマ』という物語が持つ力を信じて、私は藤井監督と実現に至るまで、さまざまなところにそれぞれに出向いていった。
ただ、作品の方向性が当初の予定よりも大幅にズレたとすれば、「『孤独のグルメ』みたいな、永遠に続くようなドラマを作ろう!」と話していた点だ。すまない。私たちがやるとこうなったのは、ご愛嬌と思って許してやってほしい。
「インフォーマ」は、私の地元、兵庫県尼崎市からスタートして、海を渡り、気づくと再び尼崎に帰ってきて終わる物語になっている。立ち上げから考えると4年にわたる物語だ。
『インフォーマ』(サイゾー文芸部)の小説を2冊執筆し、マンガも小学館マンガワンで連載している。これらの『インフォーマ』において、すべて企画を持ち込んだのは私である。原作となるベースの物語をただ書いていたわけではない。さまざまなところでメディアミックスをかけるために走り回ってきた。
たくさんの人たちに、続編のことを尋ねられるが、一度、漠然と話し合っただけで、それから特に本格的な話し合いはしていない。3作目が実現した場合、こうなったら面白いだろうという構想は脳裏にあるが、今はまだ先のことは正直考えていない。
ただ私が言えることは、私は物書きである。望まれれば、『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』を超えるような物語を書こうとすることだけはわかっているし、時代がそれを求めるかどうかだと思う。
それにまだ言えないが、『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』が最終回を迎えても、ここで終わるわけではない。国内でしっかり反響をもらったら、海を超えて戦っていくことにもなるだろう。
まずは迎え討つべき作品も存在しているし、たくさんの良質な作品で日本中が溢れかえってほしいと思っている。だって楽しみな映画や観たいドラマがたくさんあれば嬉しくないか。超えていくのはいつも自分自身であって、それは作品づくりにおいても変わらない。
『インフォーマ』で私たちがいちばん行いたかったのは、ネット社会に対するカウンターだったと思う。有名人のスキャンダルや突然、降って湧くような事柄で炎上し、それに群がり興奮するネット民に、誰かを傷つけることなく正々堂々と戦っても、刺激的な想いを感じさせることができるということ伝えてみせたかった。
もう飽き飽きしていた。人の不幸にざわつくことにうんざりしていた。だからこそ、『インフォーマ』という作品で、健康的な興奮を取り戻したかった。それが成功したか失敗したかは、観てくれた人たちに決めてもらえればよい。ただ、一つ言えることは、人の不幸で報われることはないと言うことだ。それだけは、どれだけ時代が進歩しても変わらない真理である。
一人ひとりの登場人物には、思い入れがあって、情報屋の木原慶次郎と週刊誌記者の三島寛治のコンビをまっさきに生み出したのは、私が実際にどちらの仕事もやっていたからだった。言うならば、私自身を2人に分身させ、そこからそれぞれに色をつけていった。これが脳裏でハマった時、私はそこからどのように物語が展開しても戦えるという自信があった。
最終回である。獣たちはどうなるのか。今夜、それを目に焼きつけてほしい。
物語の最後の最後も注目してもらっていて良いと思うぞ。泣いても笑っても今夜が最後だ。
最終回と同時にちょっとしたサプライズもある。今夜、ABEMAの生放送に桐谷健太さん、佐野玲於さん、一ノ瀬ワタルさんたちと出演して、最終回を観ながらみんなで語ることになっている。すまん……もう振り切ってやりたいと思っている。いや、ウソである。そこには、私の大好きな友人で『インフォーマ』のシーズン1に出演してもらったYouTuberのたっくーTVもゲストで出演している。『インフォーマ』の忘年会と思い、視聴者の人たちと最終回を盛り上げることができたらと思っている。
愛すべき物語の最後の幕が今夜上がる。
2024年、私は熱くて眩しかったこの夏を忘れることはないだろう。
(文=沖田臥竜/作家・小説家・クリエイター)
ドラマ『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』
毎週木曜日23時~ABEMAにて放送
タイムズの記者・三島(佐野玲於)は、世間を騒がせている〈闇バイト殺人事件〉の黒幕を調べるために、編集長の命でタイ・バンコクへ飛ぶことに。そこで三島を待ち受けていた人物は……2年前の〈火だるま殺人事件〉で三島に地獄を味わわせた、“インフォーマ”の木原(桐谷健太)だった。木原に翻弄されながらも取材を進める三島。そして2人の前に、インフォーマを名乗る謎の男・鬼塚(池内博之)が立ちはだかる。木原と三島は、〈闇バイト殺人事件〉で盗み出された”謎のブツ”をめぐり、鬼塚・そして現地マフィアと壮大な情報戦に巻き込まれていく——。
原作小説『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』
沖田臥竜・作/サイゾー文芸・刊/1400円+税
amazonなどネット書店、全国書店で発売中